リスクヘッジになりますか?

 ガソリンなどの燃料を多量に使う運送業などでは原油価格の変動で業績が不安定になるとよく言われます。そのため
原油の先物を買う
ドル円の為替予約を行う
これらにより業績を安定させませんか?ということで銀行などの金融機関がを売込みに来て経営者が買ったりします。

 このようなヘッジ手段をもちいることは新聞やメディアなどで本業が安定するなどメリットを強調してますし、ヘッジすることにより財務のわかっている経営者という風に思う方が多数でしょう。
(私がこう書くということはこれから批判的なことを書くということですね)

 っで、本当にその手の金融商品を買うことで業績の安定化につながっているのか?ということを後日調査して見ると実際はまったくヘッジになってなくむしろ逆になっている(全体の業績がますます良くなるorますます悪くなる)ことが結構多いです。

 なぜか?
仕入金額が上がるということは
→インフレになっているということ
→インフレは基本的に景気がいいという証
→景気が良ければ売上(の数量)は伸びるし、売上単価も上げやすい
結果として材料費の上昇によるデメリットより大きい利益が会社にもたらされる
(これに材料費のヘッジ手段を用いれば材料費のデメリットだけ消えますので大きい利益だけ残ります)

仕入金額が下がるということは
→デフレになっているということ
→デフレは基本的に景気が悪いという証
→景気が悪ければ売上(の数量)は減るし、売上単価は下げざるを得ない
結果として材料費の下落によるメリットより大きい損失が会社にもたらされる
(これに材料費のヘッジ手段を用いれば材料費のメリットだけ消えますので大きい損失だけ残ります)

円安がメリットになる会社(輸出企業を想像してください)
円安になるということ
→日本の景気が良くなる、輸出が増える
→景気がいいので利益も伸びる
結果として円安のデメリット(材料費などのアップ)より大きい利益が会社にもたらされる
(これに円安のヘッジ手段を用いれば材料費のデメリットだけ消えますので大きい利益だけ残ります)

借入金が変動金利だと金利が上がると損になるので固定金利のほうがよいのか?
→とはいえ金利が上がるということは景気がいい証拠
(逆もまた然り)
→景気が良ければ金利の上昇以上のメリットが会社にもたらされる
(逆もまた然り)
つまり景気の変動に対してヘッジするには変動金利が望ましい

もちろん売上金額が確定していて仕入金額が上がっても値上げがまったくできないのであればヘッジする価値はあるでしょう
(つまり金額が確定している受注をすでに受けている場合ですが、どの程度そのような受注があるのでしょうか?)

 仕入の金額だけ見て判断するのでは片手落ちということですね。
 仕入の金額が変動することはどういう意味があるのか?売上の変化がどのようにかわるのか?ということを少しは想像していただきたいですし、想像できないような経営ではダメということです。

 この辺は会計士もこのような金融商品によるヘッジについて、このヘッジ手段は会計基準に適合しているのか?ということには詳しいのですが、経済の全体の流れを考えて本当にリスクヘッジになっているのか?ということはまったく考えてません。
 (これは制度的な問題とも言えますが、もし制度的な問題であるならば会計士は何らかの警鐘は鳴らすべきだと思います・・・が組織として警鐘を鳴らせば金融機関の商品が売れなくなり、金融機関を敵に回すことになるのでできないのでしょうか?)

 つまりリスクヘッジのための会計基準に適合しているからといって、会社全体のリスクが回避されていない(むしろ増幅する)ことが圧倒的に多いのではないか?ということです。
 経営者には本当に役に立つと思ったときにだけリスクヘッジをしていただきたいです。

ヘッジこれはヘッジホッグですね

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